この本は、「耳が聞こえない、目も見えない人が東大教授に!?
大変やったやろね、すごいね~」っていう単なるエッセイではなく、
「本当の孤独」「人との関わりとは、、」「障害者と社会」「母の思い」「生きる」「命」「神」。。を改めて考える機会になった。
著者である福島智氏は、9歳で全盲になった上に、
18歳で聴力まで完全に失ってしまってからのことを、
「自分は暗く深いタコつぼに入り込んでしまって、
たまに誰かがその蓋を開けて、『おーい』と呼びかけてくるが、
自分は出ていくことができないまま、またその蓋は閉められてしまう。。
そのようなことが繰り返されていた」というようなことを対談でおっしゃていた。
私はそれを聞いたとき、胸が締めつけられると同時に、ぞっとした。
恐ろしいと思った。
本当の孤独。。
その孤独の淵から救い出したのが、偶然にも母が考え出した「指点字」という「ことば」。
点字のルールをもとに、著者の手の指にタイプライターを打つようにことばを伝えていく。
理解できるかもわからないまま母が息子の手を取り、最初に打ったことばは、
「さ と し わ か る か」。。
著者は「ああ、わかる、わかるで」と答えた。
暗くて深いタコつぼの蓋が開け放たれ、「希望」を持った瞬間。
(この話をするたびに泣いてしまう。。)
人は皆、ひとりぼっちに感じるときはもちろんのこと、周りにどれだけ人がいても、、いろんな孤独を感じながら生きていると思う。
それはきっと、人との関わり(コミュニケーション)が一方通行なときに、「孤独」だと感じるのかなと思った。。
「自分のことをわかってもらえない、伝えたくても伝えられない、伝わらない。。」
でも、私は相手の声も聞こえるし、目も見える。
ことばもあるではないか。
当たり前すぎて、時におっくうに思うことさえある「人との関わり」にもっと感謝し、意識を向けるようにしたい。
孤独ではない。。
10年ほど前、点字を習っていた。
当時の全盲の先生のお話が思い出される。
もう一度テキストを見返してみて、「今の私」には何ができるのか考えてみようと思う。